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<解説・異論・反論>
先日のコラムでは住宅金融支援機構が発表した「民間住宅ローンの貸出動向調査」をご紹介しました。中でも特に興味深かったのが以下の業態別の金利タイプシェアですね。
一般の方々がこの結果をご覧になっても「全体的には変動金利が支持されているのか・・・でもまぁこんなものかな?」といった形であまり違和感もなく受け止められるのではないかと思いますが、記者はそうは行きません。というのもこれまで住宅金融支援機構の発表する調査結果はいつも「固定金利優位」「変動金利より固定金利が人気」という不自然なものだったからですね。
ところがフタを開けてみれば、上記の通り変動金利タイプは6割前後ということで圧倒的な人気が続いていることが分かります。つまりは今回のような金融機関から提出された回答結果については「ごまかせなかった」ということなのでしょうね。
>>>住宅金融支援機構調査 やっぱり住宅ローン変動金利の割合は6割!
そんなわけで早速こきおろしてしまったわけですが、ただ今回のこの調査については全体的にはいろいろと役に立ちそうなデータが掲載されておりましたので順にご案内していきたいと思います。
まず気になる住宅ローンの平均借入期間と平均完済期間はこのようになっています。
具体的な数字をチェックしていくと、まず前者の平均借入期間についてはこのような分布であるということです。
・10年以下 : 1.3%
・15年以下 : 4.8%
・20年以下 : 11.8%
・25年以下 : 31.9%
・30年以下 : 42.4%
・35年以下 : 7.9%
つまり圧倒的なシェアとなっているのが20年超30年以下のゾーンであり、合計で74.3%を占めるということになります。だとすると平均期間もその20年から30年の間のどこか、というイメージを持つわけですが、実際のところ平均貸出期間=平均借入期間は「25.1年」ということでピッタリほぼ真ん中ですね。
25年と聞くと思っていたより短い感じがしますが、住宅ローン契約者の平均年齢が40才前後とすれば、65才前後の退職・年金支給開始のタイミングまでに返済しようと考えると住宅ローンの借入期間はやはり25年程度になるわけで、現実的かつ適切な借入期間と捉えてもいいのかもしれませんね。
ちなみにこの住宅ローンの平均貸出期間=平均借入期間の推移をチェックするとこうなっています。
・2011年3月期 : 25.3年
・2012年3月期 : 25.2年
・2013年3月期 : 25.2年
・2014年3月期 : 25.1年
つまり、この数年ほとんど変化はないということですね!数字がそろいすぎていて逆に違和感を感じなくはないですが・・・。
いずれにせよ、これから住宅ローンを利用しようとされている方で、「住宅ローン=35年でしょ?」といったイメージを持たれている方は早めに軌道修正した方がいいかもしれませんね。
しかしもっと軌道修正しないといけないのかもしれないのが後者の平均完済期間=平均返済期間ですね。「借入期間」は契約時の住宅ローンの期間であるのに対して「返済期間」は実際に返し終えるまでにかかる時間で、どちらも似たような響きがありますが、多くの方が繰上返済や借り換えを利用する時代ですので、おそらく返済期間は借入期間と比較すれば短くなるはずですね。
そんなわけで具体的な数値をチェックしてみると、まず分布としてはこのようになっています。
・10年以下 : 39.7%
・15年以下 : 29.1%
・20年以下 : 17.0%
・25年以下 : 9.2%
・30年以下 : 5.0%
何と多くの方が「10年以下」「15年以下」といった極めて短い期間で住宅ローンを返済してしまっているということですね!とするとこちらは全体の平均は10年超15年以下のゾーンのどこか、という気がしますが、実際の平均返済期間は何と「14.3年」ということになっています。
借入期間が概ね25年程度であるのに対して、10年以上短縮して驚きの14年ちょっとで返済してしまうわけですから、やはり日本人は真面目なのでしょうね・・・もちろん、上記の通りこの短い返済期間の要因の1つとしてはおそらく借り換えの影響もあるわけで、住宅ローン利用者1人1人の返済し終えるまでの期間はさすがにもう少し長くなるとは思いますが、とはいえそれでも一般的な返済期間のイメージより相当短いのでしょうね。
思ったより早く返済し終えているということですから、当然そうした姿勢は金融機関にとっても、住宅ローン利用者自身としても良いことであるのは間違いありません。繰り返しになりますが、これから住宅ローンを借りようとされる方は十分ご注意ください。
さて、調査の中で次に気になったのは、金融機関側から見て重視する販売チャネルです。このような結果になったとのことです。
これまた読み飛ばしそうになりますが、しかし利用者からすれば含蓄のある調査結果と言えます。と言うのも、金融機関が重視する販売チャネルというのはつまり、金融機関にとって収益性が高い、採算がよい住宅ローンを販売できるチャネルということになるでしょうから、うがった見方をすれば利用者からすると「割高な金利」を適用されてしまう可能性が高い窓口とも言えるわけですね。
では実際にどういった販売チャネルが重視されているかと言うと、上記グラフから抜き出せばこのようになっています(複数回答)。
・住宅業者、不動産業者 : 81.4%
・金融機関店舗窓口 : 71.3%
・取引先企業 : 63.2%
確かにどれも利用者からすれば、勧められるままにホイホイと決めてしまいそうなニオイがするチャネルですね・・・。
逆に最も合理的に、能動的に住宅ローンを選べそうなインターネットチャネルについてはわずか16.3%に留まっており、やはり金融機関側からすれば「売りたい住宅ローンを売ってくれるチャネル」が大切であり、ユーザーフレンドリーなインターネットチャネルは相対的には魅力が薄いということなのでしょう。
したがって、住宅・不動産業者、金融機関窓口、勤務先などを利用して紹介される住宅ローンについては本当にお得なのか十分吟味ください。
同じように金融機関の「売りたい住宅ローン」という視点で考えた場合、気になるのは「今後、重視する金利タイプ」の調査結果ですね。このような分布になっています。
業態によって志向する金利タイプが全く異なるのが面白いですね。特にその傾向が顕著なのが変動金利タイプですね。つまり都銀・信託ではこの変動金利タイプに対して80%を超える期待をかけているわけですが、逆に労働金庫やモーゲージバンクでは変動金利タイプへの期待感は3割を切っており大きな乖離が生まれています。
これはつまり、都銀・信託の担当者に相談すれば変動金利タイプがよいとおススメされる一方で、労働金庫やモーゲージバンクでは固定金利がよいとおススメされる可能性があるということですね。極端に言えば、どの金融機関を訪ねるかで、行く前からどの金利タイプがセールスされるのか分かってしまう、ということです。
だとするとやはり金融機関の窓口を訪れる前にまず自分自身でどの金利タイプがよいのかを把握した上で、そうした金利志向と合う銀行を選ぶというのが重要なのでしょうね。銀行がおすすめする商品と、自分自身が求めている商品がピッタリ一致するのであれば、話は早いはずです。おそらく。
いずれにしてもやはり銀行や業者というのは自分と利害が対立する相手であり、その意味では公正なアドバイスを期待するのは難しいですね。あまり警戒するのも現実的ではないのかもしれませんが、少なくともおススメしてくる商品について鵜呑みしないようにご注意ください。
参考になさってください。