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<解説・異論・反論>
2013年4月に「異次元緩和」が発表され、さらに2014年10月には「追加金融緩和」が発表されたことから、全体的には市場金利も住宅ローン金利も順調すぎるほど順調に低下してきました。この1月には長期金利はこれまでの0.315%だった史上最低金利をあっさり下回り、0.2%近辺まで低下しましたね。
一方でそうした金利低下の動きに変化が出始めたのがこの2月で、一時は0.45%前後まで上昇するなど、0.3%台を中心に乱高下しています。最新の長期金利のグラフをチェックするとこうなっています。
2月半ばから金利低下傾向が見え始め、一時的な混乱で収束するのかと思っておりましたが、3月に入ってから再上昇し、まだまだ落ち着く様子には見えませんね。
これまで何度かコメントしてきたように、では何か金利が上昇する材料があるかと言えばほとんどありません。あえて言えば日銀の黒田総裁がさらなる追加金融緩和に否定的なコメントを出しており、金融緩和期待が後退しているからと言えるかもしれませんが、金融緩和というのは市場の期待を裏切れば裏切るほど効果が出るわけで、そのように緩和期待が後退すればするほど、追加緩和の機運が高まるというツンデレな関係にあります(ツンデレの意味が間違っていればご容赦を)。
インフレの状況を見れば、原油安の影響で物価が下がっていくのは確実でしょうし、4月からはいよいよ消費税増税の影響がなくなってきますので、マイナス=デフレとなる月も出てくるのではないかと思います。
つまりはタイミングはともかくとして、そう遠くない将来、「異次元緩和第3弾」が発動されるのは確実ではないかと思うのですがいかがでしょうか?もしそうなれば市場金利も住宅ローン金利も、もう一段下がるのは確実ですね。
そんなわけでなぜこのタイミングで長期金利が乱高下し始めているのかその理由は定かではありませんが、中長期的に見れば金利はさらに下がる可能性があり、過度に動揺する必要はないと思います。
そもそも本日=3月12日現在の長期金利は0.395%ですが、これまでの史上最低金利である0.315%と大差なく、「上昇した、上昇した」と言っても超・超・低金利であることに変わりないわけですからね。実際、今月の住宅ローン金利も絶対水準としては史上最低金利を維持しています。
そうした極めて低い金利環境下ではあるのですが、それでも多少上昇したこともあってか、ここ最近何度か、「この金利上昇は国債暴落の予兆である」「国債暴落によって住宅ローン金利の急上昇は近い」といったフレーズを目にします。
もちろん、こうした「扇動記事」のソース元は週刊誌・夕刊紙であり、彼らからすれば「読者の不安をあおってナンボ」の世界ですから、まともに取り上げる必要はなく、金利が再低下してくれば霧散してしまうものだとは思いますが、逆に言えばこのタイミングを逃せばその主張を精査するチャンスがいつ来るかわかりませんので、自らの後学のためにその根拠をチェックしたいと思います。
そういえば、週刊誌の指摘する「Xデー」は一度も到来したことがありませんね(笑)。
それはともかく上記記事から金利が上昇する理由を探ってみるとこのような論拠のようです。
1.日本銀行による巨額の国債買い入れで、異常な低金利が続いている。だが、こんな状態がいつまでも続くはずがない。
2.日銀の買い入れ能力が限界を迎えれば、金利は急上昇し、日本国債が大暴落する。
3.金融緩和が景気回復につながらないことが明らかになれば、日本の信用は失墜し、日本国債への不安も高まる。
いかがでしょうか?
まず1つ目の「こんな状態がいつまでも続くはずがない」 と語った方は、今の日本の低金利がバブル崩壊以降の90年代から20年以上続いていることをご存知ないのですかね?
むしろ記者は少子高齢化に伴う需要不足により、低金利が永遠に続く可能性もあるのではないかと思ったりもします。つまりは金融政策や景気循環だけでなく、構造的な要因があるのではないか、ということです。
2つ目の「日銀の買い入れ能力が限界を迎えれば、金利は急上昇し、日本国債が大暴落する」 というのはいかがでしょう?こちらはよりもっともらしく響きますが、ただ問題は「日銀の買い入れ能力」とは何で、「限界」とは何か、ということですね。
理論的には日銀はどこまでも国債を買い入れることができます。限界なんてどこにもありません。投資家が誰も国債を買わなくなっても、日銀が購入し続ける限り低金利はいつまででも維持できます。
その点では「日銀がおなか一杯になって国債を買えなくなり、国債価格が暴落し、金利が急上昇する」というシナリオはおよそ考えにくいですが、一方でリスクになってくるのは「国債価格」ではなく「日本円の価値」でしょうね。
これは金融緩和の副作用というよりは、国の財政問題ですが、国の借金が膨れ上がる一方で、その借金を中央銀行が抱え込む状況というのは誰がどう見ても「自己ファイナンス」です。とすると悪影響は国債暴落=金利急上昇といった形で現れるのはでなく、円の暴落=円安の急激な進展といった形で現れるのでしょうね。
もちろん、それは住宅ローンの有無に関係なく、日本人全体にかかわってくる問題です。そしてその回避策も金融緩和の有無に関係なく、財政改革=増税&歳出カットの問題ですね。
つまりいずれにしても問題の本質は金融緩和や住宅ローン金利とは全く別のところにある、ということになります。ちなみに日本の税率は欧米に比べて極めて低いわけですから、結局のところ最終的にはわれわれが痛みをこらえて増税を受け入れるしかない、ということでしょうね。
話を元に戻して3の「金融緩和が景気回復につながらないことが明らかになれば、日本の信用は失墜」というのはいかがでしょう?
これまたこの方は、バブル崩壊以降20年以上続く金融緩和がほとんど全く景気回復につながってこなかったことをご存知ないようですね・・・。
そんなわけで確かに記者は今のようないびつな財政状況に対する危機感は共有するものの、おそらくそのひずみが最初にあらわれてくるのは金利ではなく、円の為替相場だと思います。
今のところ円安が進んだといっても120円台ともちろん常識的な範囲内ですが、これが140円や150円になってくるといよいよ黄色信号ですね。だからといって住宅ローンを持っているとより損するという話でもありませんので、その点は切り離して考えてよいと思います。
なお将来的な金利上昇を最も恐れているのは住宅ローンの変動金利タイプ利用者だと思いますが、住宅ローンの変動金利のベースとなっているのは国債ではなく、「一晩だけ」といった超短期金利であり、この金利は日銀によって完全にコントロールされています。
つまり仮に国債が暴落したとしても、それが直接的にそうした超短期金利の上昇につながり、住宅ローンの変動金利上昇につながるわけではない点はお含みおきいただければと思います。
景気への影響を考えれば、日銀はこうした超短期金利を永遠に引き上げられないのではないかと思うのは記者だけでしょうか・・・。
ちなみにこの記事はこのように結ばれています。
・景気は回復せず、金利が上昇し、国債が大暴落する。そのとき、日本国民を襲うのはハイパーインフレだ。予兆はすでに表れている。
景気が回復しなければ金利は上昇しないわけですし、上記ご案内したように国債の信用力はむしろ財政問題なわけで因果関係は無茶苦茶ですが、100歩も1,000歩も譲って仮にハイパーインフレになるとすると、モノの価値が上がるわけですから「借金してモノを買った人が勝ち」、つまり住宅ローン利用者は勝ち組となることは付言したいと思います。
インフレ経済=借金した人が勝ち、デフレ経済=預金した人が勝ち、ですからね。
まぁ、ハイパーインフレのような事態になれば日本人全員が負け、と言えるのかもしれませんが。
参考になさってください。