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<解説・異論・反論>
住宅ローン選びの中で厄介なものの1つが金利タイプの選択ですね。固定金利がよいのか、変動金利がよいのか、あるいは間をとって当初固定金利がよいのか、「正解」があるわけではないので、なかなか悩ましい問題と言えます。
さらに今のように固定金利と変動金利との金利差が縮まってくると、より悩みが深まることになります。
そうした「迷い」は各種アンケート調査にも現れておりまして、あくまでざっくりとした感覚ですが、住宅ローン借り入れ前と借り入れ後とでは希望する金利タイプがこのように変遷していきます。
<借り入れ前>
・変動金利 : 33%
・当初固定金利 : 33%
・固定金利 : 33%
<借り入れ後>
・変動金利 : 50%
・当初固定金利 : 30%
・固定金利 : 20%
つまり、借り入れ前は金利変動リスクの少ない固定金利を志向するのに対して、実際に借りてみると、多少の金利変動リスクは許容しつつ変動金利タイプを選んでいる人が多いということですね。
確かにいくら固定金利がより安心だとわかっていても、実際の支払利息額は大きく異なるわけで、何かと物入りとなる住宅購入に際して、1円でもコストの低い変動金利タイプを選んでしまいがちになるのはよく分かります。
加えて足元の金利環境を見てもどんどん金利の低下が進んでいるわけですし、歴史的に見ても20年程度低金利が続いているわけで、調べれば調べるほど固定金利を選ぶ理由がなくなるのも当然かもしれませんね。
さてこうした金利タイプ選びの悩みというのは何も住宅ローンの新規借入時ばかりではありません。借りてからも住宅ローン利用者の頭の片隅で残り続けることになります。と言うのも今であれば、変動金利タイプから固定金利タイプへの変更や借り換えというのは簡単にできてしまうからですね。
その点では冒頭ご案内したように固定金利と変動金利との金利差が縮まる中で、「いつごろ固定金利に借り替えたらいいんだっけ?」と日増しに焦り始めている住宅ローン利用者の方が増えているのかもしれませんね。
そうした悩みに答えるのが上記引用した記事ですが、しかしいい線まで行っているものの「これがいつになるかというのは予測できません。」「上昇しないとは言い切れません。」と最後で突き放すなかなかのツンデレ・・・というかデレツンな展開となっています。
さらに最終的なアドバイスが「まずは情報を知り、ご自身の見解を信じて。」ということで、これまたかなりの突き放し感です。それができないからこその相談なのだと思うのですが・・・。
ただ揚げ足を取りたくて引用したわけではなく、実は大切なことが指摘されているのですね。それはこの一文です。
・政策金利引き上げとなるのは量的緩和終了後ですので、変動金利が上昇するのはこれより後になります。
当サイトでもこれまで何度も、
・住宅ローン金利は日銀が進める金融緩和の影響を強く受けており、金融緩和が続く限りは住宅ローンの低金利が続く
・金融緩和はインフレ率が安定的に2%を超える状態になるまで続けられるが、その実現はかなり難しい
とご案内してきましたが、よく考えれば、低金利をもたらしている金融緩和が実際に終了するときにどのようなプロセスを経るのかご説明してこなかったように思います。それに気づかされたのがこの「政策金利引き上げとなるのは量的緩和終了後」という一節ですね。
つまり、今後仮に金融緩和が終了し、利上げしていくとなるとこのようなプロセスを経る、ということです。
「量的緩和」終了
↓
「政策金利」引き上げ
大事なことなのでもう一度繰り返しますが、今後金利が上昇していく場合には、まず最初に「量的緩和」が終了し、その後で「政策金利」が引き上げになるということです。つまり、いきなり政策金利が引き上げられるわけではないということです。
「量的緩和」というのは金利を下げるだけでは足りなくて、日銀が直接、国債や株、REITをどんどん市場から購入する金融緩和手法ですが、金融緩和終了プロセスの第一弾としては、まずはこの購入額を徐々に減らしていく、ということになるわけですね。
確かに「量的緩和」発表や拡大によって金利が下がってきた経緯がありますので、この緩和が縮小すれば相応に金利が上昇するとは思いますが、しかし金利上昇の「本丸」は政策金利の引き上げです。その政策金利が低い間は、市場金利も住宅ローン金利も大きく上昇することはない、ということですね。
つまり金利が本格的に上昇する前には十分な「予兆」があり、ある日突然、いきなり大きく上昇するわけではない、とも言えます。
さらに今まさにその金融緩和が終了しつつあるアメリカFRBのこれまでの縮小プロセスを見てもわかるように、金融緩和終了前には事前に入念なアナウンスが行われます。
と言うのも金融緩和縮小は経済に対して明らかにマイナスであるために、決してサプライズを起こしてはいけないのですね。ネガティブサプライズを起こせば金融市場が動揺し、実体経済に必要以上の損失・損害を発生させてしまうからです。そうなれば本末転倒ですね。
そうしたわけでその辺も盛り込むと、利上げプロセスは実際にはこのようになっていきます。
「量的緩和」縮小が予告される。
↓
「量的緩和」額が徐々に縮小される。
↓
「量的緩和」終了が予告される。
↓
「量的緩和」が終了する。
↓
「政策金利」引き上げが予告される。
↓
「政策金利」引き上げが始まる。
つまり本格的な金利引き上げに至る前に何度も何度も予告や予兆があるということですね。
翻って今の日銀と言えば、「量的緩和縮小」どころか、ますます量的緩和を「拡大」させる勢いとなっています。と言うのもただでさえ物価上昇圧力は弱い上に、原油価格の低下によりデフレに戻る可能性すらあるからですね。
だとすると、変動金利タイプから固定金利タイプへの変更や借り換えのベストなタイミングというのも「まだ当分先」ということは言えそうです。
もちろん、長期金利が0.2%台まで低下している現状では、市場金利も住宅ローン金利も更なる低下余地は限られており、金利水準という意味では「ベストな時期が近付きつつある」というのは間違いないのでしょうけれど。
ちなみにここまで、「いつかは金融緩和が終了し、金利が上昇する」という前提で解説しておりますが、少子高齢化が進み、国内市場や国内需要が縮小する中で、物価はこの先も上がらず、金融緩和も終了することなく、金利も住宅ローンの借入期間中、1回も本格的に上昇しない、という可能性は十分あります。
上記の通り大胆な金融緩和はこれまで20年程度続いてきているわけですからね。もちろんこの間、一度も本格的な金利上昇は起きていません。参考になさってください。