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<編集部からのコメント>
何度もご案内していて恐縮ですが、住宅ローン金利と関係の深い長期金利はこの1年間でこのような推移となっています。
つまりは上がったり下がったりと落ち着かない動きをしてきたのですね。中でも最大のハイライトは昨年5月の金利急上昇ではないかと思います。
この時は0.5%台から0.9%台へ一気に倍近く上昇したのですね!直前の4月に「異次元の金融緩和」が発表されたばかりですので、こうした金利上昇は少なくとも記者にとっては青天の霹靂でした。
というのも、金融緩和=金利低下というのが金融の常識だからですね。
折りしもアベノミクスへの期待からインフレや金利、株価の上昇が強く意識されている時期でもあり、住宅ローン利用者の方々の「金利先高観」は一気に高まったのではないかと思います。
ただやはり期待はどこかでしぼむわけで、その後は上がったり下がったりを繰り返しながらも大きなトレンドとしては金利低下がジリジリ進む展開となっています。
そもそも繰り返しになりますが、金融緩和を実施しているのに金利が上昇するというのはおかしな動きでして、むしろこのように金利が低下する方が「本来あるべき姿」とは言えるわけですが。
こうした金利の動きにホっとされた住宅ローン利用者の方々がいる一方で、金利上昇リスクをことさら意識し、長期固定金利タイプを選んでしてしまった方の中には「早まった」と後悔されている方もおられるかもしれません。
こればっかりは結果論ですので、現時点では正しかったとも間違っていたとも言えないわけですが、バブル崩壊以降の25年近い金利低下局面で、住宅ローンの変動金利タイプは一度も固定金利タイプに「負けていない」という点は、もう少し認識されてもいいのではないかと思ったりもします。
さてそのように全般的に市場金利も住宅ローン金利も落ち着きを取り戻す中では、住宅ローン利用者が選ぶ金利タイプも固定金利から変動金利へと回帰する動きがあるのではないかと推測しますが、それを計るのにピッタリのデータが、住宅金融支援機構が2ヶ月に1回実施している「民間住宅ローン利用者の実態調査/金利タイプ別利用状況」ですね。
「定点観測」をしているわけでこれまでの推移が一目瞭然です。欲を言えば以前のように毎月発表してくれるとトレンドを把握しやすくていいのですが・・・。
それはともかくとして最新の調査=2013年11月〜12月の結果はこのようになっています。
12月は変動金利タイプのシェアが45.5%と、調査回答者のほぼ半分の方が選択しているという点においてはやはり変動金利タイプの人気が徐々に復活していると考えてよさそうです。
一方で。
腑に落ちないのが11月の回答結果ですね。長期金利も住宅ローン金利も順調に下落していたタイミングだったわけですが、むしろこの1年を通じて、最も変動金利タイプのシェアが低く、逆に全期間固定金利タイプのシェアが最も高くなっています。
なぜでしょう・・・。
ただ上記グラフをよく見ると、折れ線グラフで当月の長期金利の推移がプロットされていますが、基本的にはやはり金利が上昇すると固定金利が伸び、金利が低下すると変動金利が伸びる関係性にあることが分かります。
つまり・・・11月の調査結果はなんらかの誤差が出てしまったということなのでしょうね。9月、10月、12月と前後の1、2ヶ月はほとんどシェアが変わらない中、11月だけポコっと変動していますので、よけいにそう感じます。
その理由としては、回答者数が228人と微妙な規模であり、たまたま結果がブレてしまった・・・という可能性が高そうです。
いずれにしても全般的にはやはり「金利の低下と共に変動金利タイプへの回帰が進んでいる」と捉えておいてよさそうです。
さて、この調査結果に基づく2013年1年間の金利タイプ別シェアを平均すると概ねこのような分布かと思います。
・変動金利タイプ : 45%
・当初固定タイプ : 30%
・全期間固定タイプ : 25%
ある意味、非常にバランスのよい分布と言えますが、最新の12月の数字は概ね似たような数字となっており、金利が乱高下した1年を締めくくるのにふさわしい調査結果ですね。もちろんただの偶然ですが。
ちなみにこの調査は、サンプルベースで住宅ローン利用者に直接質問したものですが、類似した調査に、国土交通省が民間の金融機関からの回答内容を集計した「民間住宅ローンの実態に関する調査」があります。
住宅ローンの貸し出し実態としてはこちらの方がより正確と言えますが、その最新調査に基づく2013年3月期の金利タイプシェアはこのようになっています。
証券化ローン=フラット35だとすると概ねこういう分布ということですね。
・変動金利タイプ : 58%
・当初固定タイプ : 27%
・全期間固定タイプ : 15%
変動金利>当初固定金利>全期間固定金利という力関係は同じですが、後者は変動金利タイプが6割に迫る一方で、全期間固定タイプは2割を切るなど、より変動金利に偏った結果となっています。
変動金利タイプのシェアがこの6年間、一貫して増え続けている点も印象的ですね。
逆に、住宅金融支援機構のデータは全期間固定タイプに偏っていると言えるわけですが、「平成24年度=2012年4月〜2013年3月」という約9ヶ月のタイムラグを考慮に入れても差異が大きいように感じます。なぜこうした違いが生まれるのでしょうね?
もちろん貸し出し実態としては繰り返しになりますがこちらの調査結果の方が正確なのは間違いありません。何せ住宅ローンを取り扱っている銀行自身が回答しているわけですからね。
いずれにしても、こうした調査結果や最近の金利動向を勘案すれば、住宅ローン市場において「変動金利優位」な状態はもう少し続きそうです。
参考になさってください。